一昨年0勝から「台風の目」へ オール三菱を変えた厳しい夏と選手主体の意識
7つのタッチダウンを奪っての48得点。
「ないですよね、こんなの」と、オール三菱ライオンズの林顕ヘッドコーチも予想外の快勝に笑った。
約2カ月ぶりの公式戦となったXリーグプレミア第5節のSEKISUIチャレンジャーズ戦。オール三菱は攻守、スペシャルチームで次々とビッグプレーを生み出し、48対21で勝利した。今季の成績を2勝2敗の五分に戻し、目下6位。ライスボウルトーナメント進出争いの「台風の目」になりつつある。
一昨年は0勝、昨季もわずか1勝。それを考えれば、シーズン半ばでの2勝には大きな意味がある。ただし、変化は勝敗だけに表れているわけではない。
オール三菱は6月21日の第3節を終えると、他チームより早く中断期間に入った。林HCは、その長い時間をチームの再構築に充てた。
「見つめ直す部分と、チームを作り直す部分に時間を使えたのは良かったです」
特に注力したのが、フィジカルの強化だった。通常の平日のトレーニングに加え、土日にも「へこたれそうなメニュー」を組み込んだ。厳しい練習から逃げず、チーム全体でもう一度土台を作り直した。
「一皮むけてくれたかなという感じです」
その成果がSEKISUI戦に表れた。QBデマーカス・アイアンズJr.ら外国籍選手だけでなく、RB中野哲也が2タッチダウンを挙げてゲームMVPに選出。主将のLB海崎琢もインターセプトを奪い、WR白井圭は66ヤードのパントリターンタッチダウンを決めた。
林HCは「デプスが厚くなった」とまでは言わなかったものの、「要所でいいプレーが出せたのと、けがも含めて大きなミスがなかった」と評価した。突出した誰かに頼ったのではなく、必要な場面でそれぞれが役割を果たしたことが、想定以上の大差につながった。
チーム作りの面でも変革が進んでいる。これまで首脳陣から「やってもらっていた」ことを、今季は海崎を中心に選手たちが主体となって進める形へ変えた。
「チームとしてはいい方向に進んでいる感じです」
一方で、指揮官は現状に満足しているわけではない。まだ半数ほどの選手は受け身に見えるという。オール三菱らしさを残しながら、もう一段強いチームになるためには、厳しいことを率先してやれるリーダーがさらに必要になる。
SEKISUI戦の快勝は、変革の完成ではなく、その途中でつかんだひとつの成果にすぎない。次戦の相手はIBM BIG BLUE。春とはQBが変わり、守備も上向いていると林HCは警戒する。それでも、この壁を突破できれば、チームはさらに勢いづく。
「IBMを越えたいです。IBMに勝てば見える景色が違ってきますし、選手も乗ってくると思うので、乗らせたいです」
一昨年の0勝から、昨季の1勝、そして今季はすでに2勝。厳しい夏を越えて一皮むけたオール三菱が次に目指すのは、これまでとは違う景色だ。