富士通はなぜオール三菱相手に4点差の接戦となったのか 山本HCが明かした「狙い」
ファイナルスコア28対24。Xリーグプレミア第8節、富士通フロンティアーズはオール三菱ライオンズを振り切り、ライスボウルトーナメント進出を決めた。最後まで勝敗の行方が分からない展開だったが、試合後の山本洋ヘッドコーチ(HC)の話を聞くと、この接戦には富士通が掲げたテーマが深く関わっていた。
「ベーシックなもので戦おうとプランを立てていました」と言う山本HCは、4点差という結果をそう受け止めていた。第7節のOrientalBioシルバースター戦と今節は、ベーシックなプレーでどこまで試合を組み立てられるかをテーマに戦っていたという。今回の接戦を読み解く出発点は、そこにある。
シーズンを通じ、相手に応じたゲームプランを用意する。その一方で、山本HCは、この先の厳しい戦いで立ち返る場所を見据えていた。「この先戦っていく上で、厳しい状況に立たされた時に、そのベーシックなところにたぶん戻る」
苦しい時に頼る基本のプレーで、どれだけゲームを組み立てられるか。選手たちはそれをどれだけ遂行できるか。富士通はこの2試合を通じて、その土台を確かめようとしていた。そして、ベーシックなもので戦った結果が、オール三菱との4点差だった。
だからこそ、山本ヘッドコーチの言葉は、接戦を勝ち切ったことへの評価よりも、その戦いで何ができて、何ができなかったかに向かった。守備で掲げたのは、しっかりタックルして止めることだった。それでも、外国籍選手の力で前進を許した。オール三菱には2本のキックオフリターンタッチダウンを奪われ、QBのランにも手を焼いた。追い込んだところで止め切れず、ファーストダウンを更新される。相手の攻撃が続き、富士通の攻撃機会は限られた。
「断ち切らないと結局自分たちにチャンスが回ってこない」
基本を遂行して相手を止める。その部分に、見直すべき課題があった。そこで話題になったのが「個」の力だ。システムで守っていても、外国籍選手は集まった守備をかわし、ビッグゲインに変えてしまう。87ヤードのキックオフリターンタッチダウンを決めたアイザイヤ・マルコムについても、山本HCは「彼すごいですよ」と、その能力を率直に認めた。その上で、こう続けた。
「一対一になったら止められないっていう話だとダメだと思う」
組織として相手を追い込んでも、最後に一人で止めなければならない場面はある。そこで必要な技術が足りなかったのか。それとも、守り方に問題があったのか。山本HCは、スキームと「個」の力を分けて検証する必要性を強調した。ベーシックなプレーで戦ったからこそ、土台のどこを補強すべきかが見えたともいえる。
攻撃については、一定の手応えも口にした。後半に増えた相手のプレッシャーに適切にアジャストできず、QBサックを許したことは課題だった。一方で、ベーシックなプレーでボールを動かせたことや、QBとコーチ陣がフィールドで起きていることを共有し、次の攻撃を組み立てられたことは評価していた。「ベーシックな部分をしっかりできて、さらにそこにゲームプランが入ってきた時に、狙いに行くところは狙いに行く、我慢する時は我慢する」
基本を固め、その上に相手に応じたゲームプランを重ねる。山本HCの狙いは、この言葉によく表れている。今回確かめた土台を、今後の戦いでどう生かすか。攻める場面と我慢する場面を適切に判断できれば、チームはさらに良くなると見ていた。
次戦のノジマ相模原ライズにも外国籍QBがいる。今回の課題は、次の試合に直結する。守備にはけが人が多く、普段通りの強度で練習できない事情もあるが、バイウィークで回復を促しながら、システムや細部を詰めていく考えだ。「今日はいい課題をもらったと思います」
ベーシックなもので戦い、勝利を収めながら、足りない部分を確認する。山本HCにとって、今回の4点差はそういう意味を持っていた。トーナメント進出を決めた一戦は、厳しい場面でも頼れる土台を築くための一戦でもあった。