ファンダメンタル重視で個々の技術が向上 進歩を続ける富士フイルム海老名Minerva AFCのパスオフェンス
富士フイルム海老名Minerva AFCは第3節の富士通フロンティアーズで14‐31で敗れたものの、前半は14‐7とリードして折り返すなど、過去8回ライスボウルで優勝している強豪を相手に堂々たる戦いぶりを見せた。
第2節がバイウィークだったために、約50日ぶりに迎えた実戦で光ったのはパスオフェンスだった。
この試合で富士フイルム海老名が記録したパス獲得距離は282ヤードで、総獲得距離(309)の実に91.3パーセントに及ぶ。今年2年目を迎えたQBシェヴァン・コルデイロは35回の試投で24回のパス成功、282ヤードをマークした。そして、新加入のWRジェイソン・マシュー・シャーシュは10回のパスキャッチで130ヤード獲得という成績を残してゲームMVPに輝いた。
パスオフェンスが威力を発揮したのは前半の2つのタッチダウンドライブだ。この試合で最初のポゼッションを手にした富士フイルム海老名は、7プレーで80ヤードを進み、4分半をかけて先制のタッチダウンをあげた。このドライブでコルデイロはシャーシュ、山口基樹、今中希、濵田真悟に次々とパスをヒットさせた。特筆すべきなのはこのドライブでパス失敗が1度もなかったことだ。
2度目のオフェンスはフィールドゴール失敗に終わったが、3度目には12プレーで60ヤードのタッチダウンドライブを成功させた。このドライブでもパス失敗は1度だけ。QBサックで大きくロスする場面もあったが、直後のプレーで富士通のパスインターフェアランスの反則によってファーストダウンを更新すると、最後はコルデイロがランでエンドゾーンに駆けこんだ。
「ショートパスでリズムよくつないでいこうというゲームプランが試合の前半でできたのはすごくよかったです」と語るのはこの試合で4キャッチ、34ヤードを記録したWR安達絹心だ。富士フイルム海老名がX1 Areaに所属している頃から在籍する安達は、過去との違いを実感している一人でもある。「若い山口やジェイソンが入ってきて、ジェイソンはコーチ役にもなってくれている。パスユニットとして一段階レベルアップしたかなと思うところはあります」と安達は言う。
シャーシュは日本でのプレーは今年が初めてだが、コルデイロとはハワイ大学で一緒にプレーした間柄だ。コルデイロが1年生の時にシャーシュが4年生だった。Xリーグでの初戦となる第1節のIBM BIG BLUE戦では試合中にケガを負ったこともあり、3回のパスキャッチで44ヤード獲得に終わった。彼にとっては前試合の後に7週間の間隔が空いたことがプラスに働いたようで、体調を整えられたことが第3節での活躍に結び付いた。
「(コルデイロは)Xリーグで最高のパイパワーオフェンスQBだと思っている。このオフェンスはパスキャッチもうまいし、ドライブを継続することもできる」とシャーシュは言う。自身のコーチ的な役割については「高校、大学、プロ生活の中で学んだことを他の選手に伝えているだけ」としつつも、「大事なのはファンダメンタルです。そして、キャッチの際の指の形など細部にこだわること。このチームはみんな強くなりたいと思っていて、練習後も残ってパスキャッチに励んでいます」と語る。
朝倉孝雄ヘッドコーチは、パスオフェンス向上の理由の一つとしてパスプロテクションの改善に言及した。とくに新人OL選手の松浦令於(東海大)、田中大誠(神戸大)、番匠航大(桜美林大)、坂井星河(立命館大)の名前を挙げ、「メンバー交代しながらしっかりと(試合に)出ているのでこちらも安定してきている」と指摘する。パスユニットについては「シェヴァンのやりたいオフェンスをコーチと話し合いながら落とし込んでいる。レシーバーも慣れてきている」と分析した。
ただし、指揮官として注文を付けることも忘れなかった。前半でのゴール前でのパス失敗を挙げ、「あれが通っていれば前半で(タッチダウン)3本で21対10になっていたはずですから、ちょっと違った展開になったかな。そういう意味ではまだまだですよ」
第3節終了時点での富士フイルム海老名は1勝1敗で、勝ち点3は4位タイ、得失点差を加味した順位では11チーム中5位につけている。サマーブレーク前の春シーズンを勝ち越しで終われるかどうか第4節のOrientalBioシルバースター戦にかかっている。
朝倉HCは言う。「選手たちも少しずつ実感を感じつつあると思う。次のシルバースター戦が大事ですね。ここでどういう試合ができるかじゃないですか」