富士フイルム海老名、ゴール前1ヤードで選んだ勝負 IBM撃破の裏にあった執念
【ランで48ヤード、1TDを稼いだ富士フイルム海老名Minerva AFC QBシェヴァン・コルデイロ ©X LEAGUE】
昨季総合9位の富士フイルム海老名Minerva AFCが、同8位のIBM BIG BLUEを破った―。順位だけを見れば小さな差かもしれない。ただ、この1勝には数字以上の意味があった。
開幕戦という独特の緊張感。しかも相手は、昨季最終節で逆転負けを喫した因縁の相手だった。そこで14対7というロースコアゲームを制したことは、富士フイルム海老名にとって単なる1勝ではない。新たに始まったXリーグプレミアで、自分たちが戦えることを証明する勝利だった。
象徴的だったのは終盤の判断だ。
フィールドゴールを決めれば、ほぼ勝負は決まる場面。それでも朝倉孝雄ヘッドコーチはフォースダウンギャンブルを選択した。
「フィールドゴールを外して中途半端にはしたくなかった。何でもよかったので、とりあえずあそこはもう勝負に行こうということでした」
結果的にギャンブルは失敗に終わった。ただ、その選択には「逃げない」姿勢が表れていた。開幕戦だからこそ、安全策ではなく、自分たちで勝負を決めに行く。その執念は、むしろチームの現在地をよく示していたように感じる。
そして、この試合を支えたのは後半を無失点に抑えた守備だった。もっとも、朝倉HCは単純に守備だけを称賛することはしなかった。
【IBM BIG BLUEのWR近江克仁(中央)をタックルする富士フイルム海老名LB安東竜志(左)とDB村松慶充 ©X LEAGUE】
「オフェンスがドライブしたんですよね。それでディフェンスはだいぶ休ませてもらった」
アメリカンフットボールでは失点を抑えれば守備の活躍だけが切り取られがちだが、実際には「守備を休ませるオフェンス」も重要な役割を持つ。富士フイルム海老名は派手なビッグプレーを連発したわけではない。しかし、時間を使いながらドライブを重ね、守備に余力を残した。富士フイルム海老名は攻撃時間でもIBMを約10分上回った。その積み重ねが、後半のシャットアウトにつながった。
一方で、朝倉HCは満足もしていない。
「今日は(パス)ドロップが多かった。ショートヤードを取り切れなかったところを改善していけば、もう少し勝てるオフェンスになる」
つまり、まだ完成形ではないということだ。逆に言えば、改善点を抱えながらもIBMを破ったとも言える。昨季終盤の悔しさを知るチームが、開幕戦でまず「勝ち切った」。Xリーグプレミアは10試合の長い戦いになるが、指揮官の言う「マラソン」の最初の一歩としては、非常に大きな1勝だった。